都道府県の中で3番目に広い県土を持つ福島県は、会津地方・中通り地方・浜通り地方の三つに分けられ、気候風土や地域色がそれぞれ異なります。その中で、先人たちから受け継がれてきた技法や材料を活かした伝統的工芸品*(40品目うち5品目が国指定)のうち、国指定伝統的工芸品についてご紹介します。
*伝統的工芸品
・国指定伝統的工芸品:「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づき経済産業大臣に指定された工芸品
・福島県指定伝統的工芸品:地域に根付いた伝統的工芸品を振興するため、県が指定した工芸品
福島県の代表的な伝統的工芸品について
ご紹介します。
会津塗が本格的につくられるようになったのは、
天正十八年(一五九〇)に会津の領主となった蒲生氏郷が、木地師や
塗師を前任地の近江より招き、盛んに奨励したのが始まりです。
以後、代々の藩主の手厚い保護によって技術の向上、
技法の完成へと向かい、おおいに発展してきました。
400年という時を超えて生き抜いてきた伝統の技の上に、
常に最新技術を積極的に取り入れてきた会津漆器は、
現在まで成長を続けています。
朴、栃、欅等を木地として日用品漆器を生産し、消粉・色粉などの
蒔絵と沈金に特徴があり、日本人好みの縁起の良い意匠や、
多彩な加飾法が楽しめ、渋味のある「鉄錆塗」、もみ殻をまいて模様を出す「金虫喰塗」、木目の美しい「木地呂塗」、
美しい塗肌の「花塗」が特徴です。
蒔絵をたっぷりと漆を含ませた筆で描き、乾燥の具合を見てその上に
金粉の最も細かくなった消粉を真綿で蒔きつけていく「消金蒔絵」が
会津塗を代表する技法です。
浪江町大堀地区に伝わる大堀相馬焼は、今から約三百年前、
相馬藩士・半谷休閑の下僕であった左馬という人物によって創始されたのが
始まりとされています。
この技は次第に近隣へと広がり、やがて相馬藩の特産物として
保護育成されるようになりました。
江戸末期になると、窯元の数は百戸を超え、北海道から関東、
関西方面にまで販路を広げるようになりましたが、明治期に入ると
他産業への転化も相次ぎ窯ぶ家は激減、その後戦争による打撃や
東日本大震災による影響を乗り越え、現在は14軒の窯元によって
伝統の火を燃やし続けています。
大堀相馬焼は、「青ひび」といわれるひび割が、器全体に拡がって
地模様になっているのが特徴です。
この青ひびは青磁釉によるもので、主原料となる砥山石は
大堀焼産地ただ一カ所にのみ産出する原料です。
大堀相馬焼のほとんどに青ひびに勇壮な走り駒が描かれており、
これらの他に灰釉、あめ釉、白流釉などの
釉を使用した作品もあります。
また、珍しい特徴として「二重焼」という構造があり、
入れたお湯が冷めにくく、熱いお湯を入れても持つことができます。
寒い東北ならではの風土性から生まれた工夫です。
東北最古の焼き物として約400年の歴史を誇る会津本郷焼。
会津美里町とその周辺で、産地としては珍しく、磁器(土地)と
陶器(石物)の両方を制作しており、石を原料とした焼き物の
産地としては、関東以北唯一です。
現在13の窯元が個性的な形成や絵付けを行っています。
ニシン鉢(ニシンの山椒漬を盛る陶器)のような食卓用品から、
茶器、花器、酒器、小物まで様々な種類があり、 使い勝手の良さと、
温かみのある風合いが特徴です。
会津地方の山間部で採取されるヒロロ、山ブドウの皮や
マタタビの蔓などの植物を素材とする編み組細工です。
山間地における積雪期の手仕事として行われ、日常の生活に用いる
カゴやザルなどが製造されてきました。
分業はされておらず、工人それぞれが材料採取から完成まで
一人で取り組んでいます。
手さげ籠・抱え籠・肩かけ籠・菓子器・炊事用具など が作られ、
自然素材ならではの風合いと素朴な手編みのつくりが特徴です。
「からむし織り」は、からむし(芋麻・ちょま)という植物の繊維を
素材とした織物で、日本最古の織物とも呼ばれ、かつては日本各地で
織られ献上布として納められた貴重な布でした。
昭和村では、約600年前からからむしを栽培し、近年ではユニークな
「織姫・彦星制度」で織手の養成を図るなど、栽培だけでなく
織まで手がけ、確かな伝統の継承を図っています。
「からむし織り」は、通気性・吸水性・速乾性に優れ、
防虫の効果もあり、高温多湿な日本の風土に最適な織物で、水を通すほどに風合いがよくなり耐久性も優れています。
さらりとした肌触りの良さを持ち、夏物衣料をはじめ、小物や
装飾品など幅広い用途に用いられています。
特に、夏衣としては、一度着用すれば他の織物を着ることが
できなくなると言われるほどです。